水槽を維持するうえで、油膜に困ったことはないでしょうか?アクアリウムの世界では、その正体は「バクテリアの死骸」や「エサの油分が溶け出たもの」などさまざまな意見が言われていますが、これといった根拠のある説明は少ないものです。
本コラムでは、水槽で見られる“油膜”について、弊社・山崎研究所での実験も交え深堀りします。
まず、似たような現象が、自然の池や小川でごく普通に見られることをご存じでしょうか?これには「鉄バクテリア」という微生物が関与しています。鉄バクテリアは自然の土壌に普遍的に存在する微生物で、水面にこれらの代謝物である鉄の薄い酸化被膜が浮くと自然光を屈折させて虹色に光って油膜のように見えます。 工場に勤務されている方やお近くにお住いの方が、これを見て「油漏れが起きている!?」と騒ぎになるなんてこともあるようですが、鉄バクテリアはそれ自体やその代謝物も人体・生物に無害なので心配はいりません。


自然の河川やため池で見られる「鉄バクテリア皮膜」
水槽内で見られる油膜においても鉄バクテリアと近縁な微生物が発生しているものと推測され、山崎研究所にて、水槽内に発生した油膜を顕微鏡で観察しました。弊社の設備では、これらのバクテリアの同定までは難しいですが、自然下の鉄バクテリアの顕微鏡写真と比較してもさほど相違ないと思われます。







水槽油膜の顕微鏡画像(山崎研究所 撮影)
水槽での油膜は、特にフィルターやエアレーションをしていない「止水」の環境でよく見られます。 鉄イオンの酸化反応からエネルギーを得ている鉄バクテリアの仲間は、完全な無酸素下では生息できませんが、比較的低酸素な環境を好み増殖します。つまり、エアレーション等で溶存酸素が豊富な環境では、他の好気性バクテリアが優占種となり鉄バクテリアの仲間の活動は目立ちませんが、「止水状態」の低酸素(微好気的)環境になると、鉄バクテリアの仲間が猛威を振るい油膜のような状態を引き起こすわけです。こう言われると、確かに「油膜のようなものは、ろ過やエアレーションをしていない水槽でよく見るなあ」という方も多いのではないでしょうか?
本当の油分が浮いていた場合、指や棒で触ると、膜が割れることなく即座にその部分が閉じ、元通りになります。鉄バクテリアをはじめとする微生物の場合は、触った箇所はそのまま穴が開いたような状態が維持されます。これで油膜が、本当の油なのかバクテリアなのかが判断できます
「油膜は、エサの油分が溶け出たもの」という意見に関して、参考までに以下の実験をご覧ください。200mlの水道水を入れたビーカーに対し、10gのメダカ用飼料を加え、60分間静置し観察した試験になります。 水に対してかなり多い飼料という条件で行っても水面に油膜のようなものは見受けられません。


水槽で見られる油膜は、水中の微生物(バクテリア)や有機物で構成される複合的なバイオフィルムであることが多いです。 以下の場合にはこれらが見られる傾向が高いです。
この膜が観賞魚に直接悪さをするわけではありませんが、観賞魚にとって適切な水の状態とは言えませんので、高頻度に換水をすることやろ過機能を強化することで対策をおすすめします。