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ブラインシュリンプについて

今回は稚魚のエサとして使われることの多いブラインシュリンプについて書かせていただきます。

  • ブラインシュリンプ

観賞魚の世界ではブラインシュリンプと呼ばれる事が多いですが、水産の世界ではアルテミアと呼ばれています。
ブラインシュリンプのブラインというのは塩水という意味なので、ブラインシュリンプは直訳すると「塩水エビ」という事になります。アルテミアという呼び名はブラインシュリンプの属名であるArtemia(アルテミア)をそのまま用いています。
この記事では、なじみの深いブラインシュリンプを用いることにします。

ブラインシュリンプの産地

ブラインシュリンプは塩分の高い水中に生息します。産地によって塩分は異なりますが、例えば、主な産地であるソルトレイクシティでは8〜28%程度です。海水の塩分が3%程度ですから、海水の3〜10倍近い塩分でもブラインシュリンプは生息できることが分かります。
これほど高い塩分の環境下では外敵がほとんど存在せず、ブラインシュリンプが生態系の頂点になります。

中国北部の塩田でブラインシュリンプが自然繁殖している場所を訪れた事がありますが、ブラインシュリンプの他には昆虫であるミギワバエの一種が存在するだけで、魚類や甲殻類などの生物は一切見られませんでした。

ブラインシュリンプの主な産地はアメリカのソルトレイク、サンフランシスコ、中国渤海湾周辺、ウイグル地方、ロシア、ベトナム、チベットなどが挙げられます。 アメリカのソルトレイクのブラインシュリンプは野生のモノですが、巨大な湖に浮遊する卵を飛行機で上空から探して、連絡を受けた船がオイルフェンスを使って卵を採収するという、とんでもない規模の産業です。

ソルトレイクは一昔前までは最高の孵化率を誇る産地として知られていました。
しかし、最近は孵化率が低下しており、90%前後の孵化率、年によってはさらに低い孵化率の事も多いです。最新の情報では今シーズンも採収業者から値上げの通告があったようで、値上がりが避けられそうにありません。

  • オイルフェンスで卵を囲む様子

    オイルフェンスで卵を囲む様子

  • 卵採集の風景

    卵採集の風景

一方、中国産のブラインシュリンプの品質が年々向上しており、価格、品質ともに中国産ブラインシュリンプの存在感が増しています。
しかし、中国のブラインシュリンプはメーカーやロットの違いで、粗悪品が混じる事もあるのが注意が必要です。

ブラインシュリンプの種類は産地によって異なり、大きさや栄養価が異なっています。
大きさ順に並べると、チベット産、中国産、アメリカ産、ベトナム産となります。
しかし、中国産でもアメリカのブラインシュリンプの株を導入している例もあり、中国産はメーカーによって大きさが異なるようです。
チベット産のブラインシュリンプはあまり流通していませんが、孵化したての幼体は650µmくらいあります。ソルトレイク産では450µm程度ですから、4割程度大きいことになります。また、不飽和脂肪酸の含有量が多いのも特徴です。マダコの幼体に適しているようです。

ベトナム産のアルテミアは小さい事と孵化率が高い事が特長で、ベトナム南部で養殖されたモノが流通しています。ほぼ100%のふ化率を誇る高品質です。脂肪酸組成にも優れているベトナム産ですが、その唯一の欠点は価格が高い事です。中国産やソルトレイク産と比較して2倍近い価格になります。

孵化率を上げる方法

ブラインシュリンプは安価なモノでは無いので、少しでも孵化率を上げたいものです。ちょっとした違いで孵化率が変わりますで、より高孵化率を期待できる孵化方法をご紹介します。

使用する塩水

塩は大体2.5%〜3.0%程度の濃度が適しています。産地やロットによって最適濃度が多少異なりますので、商品ごとに注意書きがあれば、それに従います。
pH8程度で孵化に必要な酵素の活性が高くなるので、塩に多少の重曹を入れると孵化率が上がります。

温度

28℃程度が適温です。温度が低いと孵化するタイミングがずれたり、孵化率が低下します。孵化した幼体はどんどん栄養価が減っていきますので、孵化のタイミングが合わない場合、早めに孵化した幼体は栄養が失われていきます。また、幼体が死んでしまえば水の汚染につながります。
水温が低い場合には、一般的に言われている24時間より孵化に時間が掛かる事が多いので、24時間より何時間か待ってから使用した方が良いでしょう。

あまり重要視されていませんが、光は重要な要素です。
水面で2000ルクス程度あると孵化率が上がります。2000ルクスといわれてもピンときませんが、大体コンビニや部屋の窓際程度の明るさのようですから、かなりの明るさですね。 24時間つけっぱなしで構いません。逆に真っ暗はよろしくないです。

エアレーション

ブラインシュリンプの孵化には酸素が必要です。孵化した後も酸素が無いと死んでしまいます。
卵が十分に撹拌されるエアの強さがあれば大丈夫です。逆に滞留があって、動かない卵がたまっている状況は駄目です。

卵の量

ブラインシュリンプの卵を入れ過ぎると、孵化した幼体の死ぬ数が増え、水が汚れて孵化率が低下します。あまり卵を入れ過ぎない事が大切です。
水の有機物が多いと孵化率が低下するようです。使用する容器や水は清潔なモノを用いてください。これも盲点ですが、容器をきれいに洗うと孵化率が上昇する事があるようです。

保存期間

ブラインシュリンプの保存方法も重要です。冷蔵庫で保存してください。酸素は無い方が良いので、缶を開封した後は、出来るだけ密封して保存してください。
湿度は大敵なので、冷蔵庫に入れて出し入れする時は結露に注意してください。

脂肪酸組成について

ブラインシュリンプの産地によって脂肪酸組成が異なります。
海水魚に不飽和脂肪酸は非常に重要な栄養価のため、海水魚にブラインシュリンプを与える場合、ブラインシュリンプに栄養強化する事が一般的です。しかし、不飽和脂肪酸は淡水魚には海水魚ほど必須の栄養では無い事から栄養強化が軽視されてきました。
しかし、栄養強化したブラインシュリンプを与えることによって、キンギョの稚魚の歩留まりが良くなるという報告もあって、今後注目されるかもしれません。